ADAPTATION MEASURE 010
BEFORE
海洋資源を支える海洋生態系の重要性や、気候変動がそれらに与える影響が認識されず、長期的な資源の持続可能性が看過されていた。
AFTER
海洋生態系の回復を見据えた適応策を取り入れることで、より持続的な資源利用が可能になるとともに、さらなる付加価値を沿岸コミュニティにもたらすことができる。
水産業をはじめとする海洋資源の利用は、海の生態系に支えられた重要な経済活動である。気候変動問題の深刻化に伴い、近年は温室効果ガスの削減等の緩和を目的としたエネルギー開発等、新たな海洋資源の利用が注目を浴びている。また、気候変動によって悪影響を受けている海洋生態系の将来的な回復を担保する適応の視点を取り入れた取り組みも進んでいる。こうした生態系の適応策は、持続可能な海洋環境の実現のみならず、沿岸コミュニティに様々な便益をもたらしうる。
CASE.01
ウニの陸上蓄養による藻場保全
「海のゆりかご」とも呼ばれる藻場は、海の多様な生態系の維持に重要な役割を果たすほか、水産業においても不可欠な存在である。さらに近年では大気中の二酸化炭素を吸収する「ブルーカーボン生態系」としての機能に注目が集まっている。しかし、地球温暖化などが原因で増えすぎたウニによって浅瀬における磯焼けが発生し、藻場の減少が問題視されている。そこで、養殖ベンチャー企業によるウニ畜養を通じた藻場の保全の取り組みが進められている。漁業者から不要なウニを買い取り、陸上畜養技術を活用してそれらを新たな地元特産品として生産・販売するのが彼らのビジネスモデルだ。これにより、藻場の回復だけではなく、漁業者の新たな収入源の創出、ブルーカーボンによる温室効果ガス削減など様々なメリットがもたらされている。
CASE.02
シナジー創出型洋上風力発電
カーボンニュートラル社会の実現に向けた新たなエネルギー源として、洋上風力発電が注目されている。これまでは地域の沿岸漁業との対立構造に耳目が集まりがちだったが、近年、発電設備およびその周辺海域をさまざまな用途に有効活用することにより、海の生態系機能を持続的に活用したコ・ベネフィットの創出に向けた議論が進んでいる。風発施設近辺に漁礁を設置して水産資源を増殖させる、風発設備のアンカーと電力を活用して養殖業を操業する、ワカメや昆布を養殖してCO2を吸収する(ブルーカーボン)、海づり公園やダイビングスポットを設置して観光パークを経営する、海洋モニタリング機器を設置して海況情報をリアルタイムで公開する、といった活動がその例である。気候変動緩和のための空間と設備を多面的に活用することで新たな資源や価値、雇用を生み出すことができ、地域経済活性化に寄与できる。
Sources:
漁業協調の考え方(一般社団法人海洋産業研究・振興協会)
Sources:
洋上風力発電と漁業協調方策(一般社団法人海洋産業研究・振興協会)
こちらの事例導入に関して、
ぜひお問い合わせをお待ちしております