BEFORE
土壌流出は様々な水圏生態系に悪影響を及ぼしている。気候変動により悪化するとされているこの状況は、土壌劣化のみならず、海洋生態系などに依存する人々の生活や経済活動にも影響する。農地の周りに「グリーンベルト」の緩衝地帯を設けることで、土壌流出を抑えることはできるが、その分、農地面積、すなわち農業生産を削減することになっていた。
AFTER
グリーンベルトに、生産性のある植物を植え付け、その年々の成長部分を用いた商品開発などの経済活動を実施する。グリーンベルトが流出物をせき止め、削減することにより、生態系への保全効果が得られる。その成長部分を買い取ることで、グリーンベルトは耕うんせずとも、協力農家への年々の見返りができ、更なる保全活動への理解や資金を得ることが可能になる。
気候変動の影響の一つに、土壌流出があげられる。降雨の増加や激化、干ばつ、強風などの異常気象により、表土の喪失が進みやすい状況が作られているからである。このことは、土地の生産性のみならず、堆積物や汚染物質が流れていく、水圏生態系にも悪影響を及ぼす。肥料の流出による富栄養化や、赤土の流出によるサンゴの生息環境の悪化は、これらの水圏生態系に依存する人々や文化、経済にも影響する。
土壌流出の防止には、農地や水路の周囲に、耕うんされない緩衝地帯を設けることが効果的とされてきた。こういった「グリーンベルト」の植生が、物理的に流出物の量や質を改善するからである。しかし、この対策は、これまで活用していた農地での生産活動を削減するという、経済的負担を農家に要するものであった。本適応策では、経済的生産性のあるグリーンベルトを開発することに成功した保全活動を紹介する。
CASE.01
白保村のグリーンベルト月桃の商品開発
石垣島の白保集落は、サンゴ礁の豊富な海に面し、古来から農業や漁業を営んできた。しかし、土地の開発や農地の耕うんに加え、気候変動による影響により、赤土という、細かな粒子の土が海に流出し、サンゴを脅かしている。土に埋もれたサンゴが窒息したり、日光が遮られるために光合成ができなくなるからである。
そこで白保のサンゴ礁を集落総有の財産として守り、受け継ぐ取り組みを行う白保魚湧く海保全協議会では、WWFジャパンと連携して集落の伝統文化や自然環境の保全と継承、水質モニタリングなどに取り組む一方で、赤土流出を防ぐためのグリーンベルトの植え付けに着手した。月桃や糸芭蕉といった、しっかりとした根を張る在来種を、時には学生やボランティアらと設置し、環境教育と保全活動を実施した。
Credit: Masahito Kamimura
さらに、「白保日曜市」として、自然の恵みを利用した地域産品の製造・販売に取り組む住民グループと協力し、これらの植生を使った商品開発として月桃を用いたルームスプレーを開発した。これら一連の活動は、2012年に設立された持続可能な村作りに取り組むNPO法人夏花に継承されている。
Credit: Aya Yoshida
現在、月桃を用いたルームスプレーやお茶の製造販売なども手がけることで、グリーンベルトのために農地を提供した協力農家からの買取も可能にした。商品販売による利益は、更なるグリーンベルトの導入や商品開発といった、保全活動を継続するための資金となっている。
Sources:
The Story of Sarmin by NPO法人 夏花
Sources:
NPO法人 夏花
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