BEFORE
いつおこるかわからない災害に備え続けることは現実的には難しく、従来の防災は持続可能な取り組みになりにくかった。
AFTER
フェーズフリーの考え方に基づいた気候変動適応策は、普段の生活を豊かにしてくれるため無理なく取り組むことができ、その結果として非常時でも安心・安全に暮らせるようになるため、持続可能な生活が可能になる。
フェーズフリーとは、2014年から日本で始まった防災に関わる新しい概念・考え方で、日常時と非常時というフェーズをフリーにして両方のフェーズで役立てるというものだ。
これまでの防災は、災害に対して“備える”ことを前提として安心安全な社会をつくろうとしてきた。しかし実際には、いつ起こるかわからない災害に対して“備える”こと、“備え続ける”ことは難しく、持続可能な取り組みになりにくい状況があった。このような背景のもとで生まれたフェーズフリーは、日常時の暮らしを豊かにしながら、非常時の命や生活を支えるようにデザインされていることが特徴だ。
現在、この概念は産官学民のあらゆる領域で広がり、様々な実践例が増えている。
CASE.01
にぎわいと楽しさを生み出す機能が、非常時には地域を支える公園『イケ・サンパーク』
2020年
としまみどりの防災公園「イケ・サンパーク」は、造幣局東京支局の跡地の一部約1.7haを利用した防災公園として2020年に開園した。都内有数の木密地域に隣接する貴重な資産を有効活用するため、UR都市機構と協定を締結し、防災公園と市街地を一体整備する「防災公園街区整備事業」を実施。整備には民間資金を活用したPark-PFI方式を導入した。
区内最大の芝生広場を有しているため、日常時は利用者の憩いの場や、週末のファーマーズマーケットなどが開催される多彩なイベント空間として賑わいをもたらしている。災害時には地域住民や帰宅困難者の一時避難場所となり、その後は救援物資の集積・集配所等として機能する。広場の中央部には区内の公園唯一のヘリポートを整備すると共に、大型トラックによる救援物資の搬入、重症患者の搬送等を可能にするため、園路には耐圧路盤を整備した。木造住宅密集地域に面した公園東側には火災の延焼を防ぐ防火樹林帯を配置。他にも飲料用応急給水槽や防災井戸、非常用発電設備、非常用トイレ、防災倉庫を整備し、防災機能を強化。地域の賑わい空間と防災機能空間との両立が実現している。
CASE.02
日常時の豊かな暮らしに貢献しながら非常時の社会を支えるごみ処理施設『バリクリーン』
2018年
「安全安心で人と地域と世代をつなぐ今治市クリーンセンター」を基本コンセプトとしてデザインされた、地域の憩いの場・防災拠点としての機能を有するごみ処理施設。日常時のプラント稼働や地域の人々のさまざまな活動が非常時にも役立てられ、地域を守り安心を提供する拠点として新しいランドマークとなっている。
計画段階からフェーズフリーのコンセプトのもとで設計された施設で、ハード・ソフト両面において計40項目のフェーズフリー化が施されている。
本施設は5年間の運営実績があり、日常のごみの安定処理に加え、豪雨で発生した災害ごみを処理した経験を有する。日常時は年間約20,000人が集う地域の核となっており、毎日のように市民が施設を利用している。災害時には市の指定避難所として2回の避難所運営実績を持つなど、「いつも」と「もしも」の両方で地域に貢献する施設となっている。フェーズフリーにより、従来は敬遠されがちであったごみ処理施設が、地域に受け入れられる場へと変貌を遂げた。
CASE.03
快適な生活をつくり出す空間が水害の際にも役に立つ賃貸住宅『ニーモ』
2021年
3階建メゾネット型の賃貸住宅で、1階を鉄筋コンクリート構造とした木造建築である。日常の暮らしやすさにとどまらず、近年甚大な被害が増加しつつある水害に配慮。復旧のために入居者が一時退去しなければならないという従来の木造賃貸住宅の課題を解決して入居者の生活を守り、オーナーも賃貸経営事業の継続を望める住宅だ。
防災の取り組みである「ぼ・く・ラボ」から生まれた商品で、1階は車庫を兼ね、屋外の駐車スペースを不要とすることで土地の高度利用を図っている。水害時は、コンクリートの強固な構造が直接的な被害を抑え、長期の乾燥が必要な木造とは異なり、復旧時のメンテナンスがしやすい設計になっている。2・3階に主な生活機能をまとめているので、1階が浸水しても在宅避難もできる。ルーフバルコニーや多くの開口部は開放的で快適な環境を提供する一方、被災時の避難可能性を高めている。日常時は事業効率が高く、開放的な住まいとなり、被災時は在宅避難も可能で復旧も早く、生活と事業の継続性を高めたオーナー、入居者の双方にメリットがあるフェーズフリーな賃貸住宅だと言える。
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