ADAPTATION MEASURE 023

災害を生き抜く知恵の伝承

BEFORE

古来から災害の教訓は、親から子への口頭や石碑などによって伝承されてきた。しかし、被災地において再び同様の災害が発生するのは数十年後のことであることが多く、必ずしも全ての教訓が伝え続けられるわけではなかった。

AFTER

自然災害の記憶や教訓を現代に継承することによって、地域の防災力向上や被災地の地域振興につなげることができる。1995年兵庫県南部地震以降はインターネットも普及し、災害の教訓や各地の活動が記録や記憶として広く共有されるようになった。

災害大国・日本では、過去の災害からの教訓を後世に伝えるための自然災害伝承碑や、東日本大震災の震災伝承施設をネットワーク化した「3.11伝承ロード」、過去の自然災害時に残された構造物を保存した災害遺構など、様々なかたちで災害の記憶を伝承してきた。
印刷技術が生まれる以前、災害を生き抜く知恵は口承により語り継がれ、あるいは石碑に刻まれてきた。インターネットが発達した現代ではさまざまな災害時の教訓をデジタル化された情報として発信でき、災害を生き抜く知恵をより広く共有することができる。このように蓄積されてきた教訓は、未来の防災教育や防災力向上のために不可欠なものである。

CASE.01

自然災害伝承碑

石碑は材料としては朽廃しにくいため、災害を伝承するために日本で古くから使われてきた。津波など災害に関する碑を国内外で比較すると、海外では死者の供養や記録のために死傷者の名前等が刻まれることが多いが、日本では災害の教訓を伝える要素が強いように思う。こうした石に刻まれた教訓により、後の災害で被害を免れたという事例も多い。

自然災害伝承碑データベースによると、1026年に発生した万寿3年津波に関する松崎の碑(島根県益田市)が最も古いものであり、建立は1814年である。また、1361年の正平南海地震津波に関する碑が、1380年に徳島県海部郡美波町で建立されたという記録も残されている。

1707年宝永地震・大津波の碑(大分県佐伯市)

撮影: 村尾 修

CASE.02

3.11伝承ロード

2011年3月11日に発生した東日本大震災により東日本沿岸部の広大な地域が甚大な被害を受けた。その後、被災各地ではおよそ10年をかけて街の復興が進み、その結果、様々な伝承施設、防災拠点、伝承碑、案内板等が見られるようになった。「3.11伝承ロード」はこうした東日本大震災の伝承施設をネットワーク化し、プラットフォームとして地域の防災力向上と被災地の地域振興を目指すものであり、震災遺構や伝承施設、被災地の復旧・復興などに関する情報発信、防災力向上のための教材・プログラムの開発、震災伝承施設を活用したツーリズム支援などが行われている。

Credit: 3.11伝承ロード推進機構 (HP)

CASE.03

災害遺構 たろう観光ホテル

災害により被災した構造物そのものは、テキストと画像で二次元に加工された他のどのような情報よりも被災状況を伝えるうえでインパクトが強い。こうした被災構造物は災害遺構と呼ばれる。これらは、過去の災害のみならず、戦争の傷ましさを伝えるためにも残されてきたが、東日本大震災以降、より注目を集めるようになった。たろう観光ホテルは181名の犠牲者を出した田老地区において津波に耐えた数少ない構造物であり、国内第1号の震災遺構(復興庁)となった。

撮影: 村尾 修

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