ADAPTATION MEASURE 005

堤防による防災から多目的遊水地による減災へ

BEFORE

河川の堤防を高くしても、どこかで越水すると洪水は防げない。そのリスクは気候変動とともに高まっている。

AFTER

都市公園や廃村、農地などを活用した遊水池に水を誘導することで、水害の減災に寄与できる。

日本の河川の多くは都市部や農地などのそばを流れており、堤防によってすべての地域を守ろうとしても増水時にはどこかで決壊し、大災害を引き起こす。
気候変動により数十年に1度と言われる増水の頻度が高まる中、大規模豪雨災害を“防ぐ”堤防を築くことよりも、多目的遊水地などによって増水時に水を“逃がす”ことが重要になっている。日本には古くから、「水を治める(治水)は国を治める(治国)に通ずる」という言葉があり、減災を図る治水対策が行われてきた。減災という古くて新しい治水によって、人と自然の共存を目指したい。

CASE.01

新横浜公園の多目的遊水地

2003年

全国有数の人口密集地域を流れる鶴見川は、堤防近くに家屋が多く、川幅拡張などの対策が困難だった。このため、サッカー等の球場として親しまれている施設がある新横浜公園を遊水池とした。

総貯水量390万㎥となるこの遊水池は2003年から2015年までの13年間に16回も流入しており、その機能を果たしている。観測機器による効率的管理が行われており、全国的に有名で多くの人に親しまれている多目的公園だけに、増水時にはSNS等での露出度も高い。

CASE.02

鉱害を乗り越え、利根川の水害対策の要となった渡良瀬遊水地

1970年

江戸時代に利根川の支流となった渡良瀬川は足尾鉱毒事件と水害に悩まされてきた。そのため渡良瀬川下流部に遊水地をつくる計画が打ち出され、谷中村に巨大遊水池をつくることで氾濫による鉱害の減災対策を進めた。遊水地周辺は、複数の川が錯綜する低湿地であり、遊水地完成後も周辺地域は大きな洪水被害に見舞われていたため、遊水地をより効率的に活用するために1963年より調節池化が行われた。現在は遊水地の中に3つの洪水調節施設が整備され、上流にあるダムとともに豪雨による水害を防いでいる。ハート形の谷中湖は首都圏の貯水池としても機能し、自生するヨシが水質を浄化している。

CASE.03

途切れた堤防、低い堤防で治水する霞堤(かすみてい)と洗堰(あらいぜき)

2014年

滋賀県姉川支流の高時川では、下流の氾濫防止等のため、通常の堤防よりも部分的に低い堤防「洗堰」を設けることで、都市部等の災害被害を抑えている。また、不連続な堤防「霞堤」によって、氾濫時には部分的に越水させ、水が引いたときに水を川に戻すことで洪水の被害拡大を防いでいる。こうした減災は、15〜16世紀の戦国時代から行われていたという。

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