ADAPTATION MEASURE 006

市民の防災知識向上のためのデザイン

BEFORE

突然の災害に対して知識がなければ、助かる命も失われてしまうことがある。

AFTER

自然災害に対する知識を日頃から高め、十分な備えをすることで、もしものときに自分と大切な人の命を守ることができる。

地震や台風、ハリケーンをはじめとした自然災害が急増する中、防災の重要性がますます高まっている。これまでに私たちは、防災の意識を人々に意識づけ、複合的な社会課題を解決し得るコミュニケーションを設計する防災のインフォメーションデザインに取り組んできた。
概して人は、いつ訪れるかわからない最悪の事態については考えたがらず、行政が発信するものと考えられがちな防災コンテンツは一般的には退屈で地味なイメージがある。こうした自然災害に対する心理的なバイアスを是正し、人々に防災のための意識付けや知識の向上を促していくためには、防災をポジティブなものとしてとらえ、楽しく、わかりやすく伝えていくコミュニケーションを設計することが大切となる。
また、救出活動における目処とされる災害後72時間においては、極限状態において生き残る知恵などを広く共有するためのコミュニケーションデザインが求められるだろう。
このように災害支援においては、「災害発生以前」「災害後72時間」「復興期」などフェーズによって求められるアクティビティは異なるため、さまざまな課題が時間の経過とともに現れる自然災害のタイムラインを理解しておくことが重要だ。自然災害に対するレジリエントな社会をつくるためには、さまざまな局面において機能的なコミュニケーションを設計していく必要があり、適切なデザインによる訴求が役立つ。

CASE.01

世界最大規模の防災出版プロジェクト「東京防災」

2015年

1 years

「東京防災」は、2015年9月1日(防災の日)に東京都内の全世帯約750万部並びに小中高向けに約136万部を配布した防災ブックだ。

世界一災害危険度が高い都市と認定された東京の人々に、もしもの時のための大切な防災情報を受け取ってもらうために、防災を徹底的にエンターテインメント化して伝えている。工事現場などで用いられる警告色である黄と黒のストライプを都市防災のキーアイコンに設定した本書は、「漫画」「キャラクター」「イラストレーション」「ユニバーサルデザイン」などのエレメントを駆使し、全世代が楽しめる誌面構成となっている。日本の防災デザインのイメージを覆した「東京防災」は、各地で災害が起こるたびにSNSで拡散されるなど全国的なムーブメントに発展した。

CASE.02

生存に役立つオープンデザインを被災者に届けるwiki「OLIVE」

東日本大震災発生からわずか40時間後に立ち上げられた「OLIVE」は、災害時に役立つオープンデザインを被災者に届けるwikiだ。サイトには、物資のない被災地で生きるために必要なものを、身の回りのものでつくるアイデアが世界中から集まり、1000万以上の人たちに情報が届けられた。

有志の協力によって多言語に翻訳されているOLIVEは、集合知を利用した災害対策データベースとして拡張を続け、書籍や防災キット、東京都全戸に配られた「東京防災」などに発展。現在も世界各地で災害が起こる度に、これらの取り組みで発信されてきた情報が参照されている。
災害時にデザインの力を役立てられることを実証した一連の取り組みは、デザインの歴史に刻まれる重要なプロジェクトとなり、高校生向けの教科書にも掲載された。

CASE.03

パンデミックから命をまもるための共同編集サイト「PANDAID」

2020年

「PANDAID」は、デザインの力を最大限活用し、新型コロナウイルス感染症から身を守り、拡大を最小限に抑えることを目的に立ち上げられた。医師や編集者などさまざまな専門性を持つ300名以上の有志がボランティアとして運営に参加し、多言語で展開されている。

 

「正しく・楽しい=興味深い」感染症対策のウェブサイトを掲げるPANDAIDには、感染症に関するさまざまな知識・知恵が集められ、一般の人たちが直感的に理解しやすいコンテンツとして発信されている。インフォグラフィックやポスターなども制作され、「ソーシャルディスタンス」の重要性を伝えるポスターがSNS上で世界各国にシェアされ国連からも発信されるなど、デザインの力を活用した感染症対策のムーブメントが生まれた。


PANDAIDは、新型コロナウイルス関連の情報が日本で最も整理されたサイトのひとつとして大きな存在価値を示した。

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