BEFORE
太陽光により温められた屋根からの輻射熱による室内温度への影響は、普段はあまり顧みられていないが、実は室内の温度を保つための無駄なエネルギーが発生している。また、都市部でのヒートアイランド現象の原因にもなっている。
AFTER
適切な屋根面の施工は、建物の内部の温度を下げ、街を涼しくすることに加え、エネルギーの自給自足を促すことにもつながる。
建設済みの建物に、わずかな加工を施すことで気候変動に適応した建物へと安価にコンバージョンできる術はたくさんある。中でも、室内の温度をコントロールするための屋根面のコンバージョンは非常に重要な適応策だ。例えば屋上緑化の水の蒸散作用や土の断熱効果には、室内の温度を下げることが期待できる。あるいは屋根を暗い色から白色度の高い色に変更するクールルーフを取り入れれば、光を反射して内部に熱が伝わりにくくなり、断熱塗料を利用すればその効果はさらに高まる。また太陽光パネルを住宅や工場など建築の屋上面に施工すれば、エネルギーの自給自足を促せるだけでなく、日差しを遮ることができるため、室内の温度を下げる効果も期待できる。
CASE.01
屋上緑化
ヒートアイランド現象の緩和や、都市と生態系の共生を考える上で、屋上緑化が注目されている。屋上緑化には都市の美観や住民のウェルビーイングを高める効果が期待できるが、それだけではない。水の蒸散作用や土の断熱層によって、夏は外の熱の侵入を防ぎ室内を涼しくし、冬は内部の温かい温度を外に逃さずに閉じ込める効果がある。屋上での養蜂や在来植物の植え込みによって、都市開発で分断されがちな生態系をつなぎ、周辺の自然を回復させる効果が期待できる。そして土が保水力を持つために、雨水を吸収する洪水に強いまちづくりにも役立つ。雨水利用のタンクを併設すれば、水を無駄に使わずに植物に潅水でき、さらなる保水力の向上にもつながる。
CASE.02
クールルーフと高断熱性塗料
航空写真を見ると、現在の都市はオーナーの趣味趣向によって屋根面が様々な色で塗られていることがわかる。これは適応策の観点では、大変もったいない状況だとも言える。なぜなら黒い服が日光の熱を吸収するように、色や素材によっては熱を吸収してしまうからだ。逆に屋上面の色を白色度の高い色で塗装するだけで高い省エネ効果が期待できる「クールルーフ」という施策が世界中で注目され始めている。
2013年、国際エネルギー機関(IEA)は、白色の屋根がCO2排出量を削減し、地球温暖化を抑制すると発表した。カリフォルニア州のローレンス・バークレー国立研究所によると、暗色の屋根の日光反射率は10~20%程度である一方で、白い屋根は70~80%を反射する効果がある。クールルーフをさらに効果的にするためには、断熱塗料が有効だ。日本にはGAINAなど、ロケットなどに使われる宇宙工学の技術を応用した屋外用の断熱塗料が存在しており、従来の塗料に比べて圧倒的に高い断熱性を実現している。白色度の高い断熱塗装を屋根に塗るだけで、かなりの遮熱断熱効果が期待できる。
CASE.03
太陽光パネル設置による室内の冷却効果
太陽光パネルは言うまでもなくエネルギーの地産地消を助け、災害時にも安定したエネルギーインフラを提供するが、隠れた大きな効果として遮熱がある。太陽光パネルは、夏場には屋根面への日射による熱の侵入を防ぐ日陰を作り出す。PVソーラーハウス協会の実験によると、外気温が36.4度のとき、パネルのない天井面の温度は56.5度で、外気温に比べて約20度も高くなっていたが、同時刻のパネルありの天井面の温度は47.1度で、10度ほど抑えられていることがわかった。また逆に、冬場には放射冷却によって室内の熱が逃げるのを抑える力も期待できる。このように太陽光パネルは持続可能なエネルギーの利用だけでなく、日射を遮る副次的な効果もあり、都市全域での実装が期待される。日本では、太陽光パネルをリース契約し、リース料や使用した分の電気代を支払う代わりに、一定期間後に住宅所有者に無償で譲渡するモデルが普及している。こうした仕組みを積極的に取り入れることで、屋上の太陽光パネルの普及が進んでいくだろう。
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