ADAPTATION MEASURE 038

廃棄物を地域内で持続的に循環させる資源システム

BEFORE

従来の「採取する>作る>捨てる」プロセスで、資源の採取に使われる無駄なエネルギーが、公害や環境破壊を引き起こしてきた。つくられたモノは使い終わったら埋立・焼却処分され、こうした材料とエネルギーの浪費が、より長期的な環境破壊をもたらしかねなかった。

AFTER

私たちが使うすべてのモノをアップサイクルし、新しい製品に変える循環システムを構築することで、エネルギー消費は最小限に抑えられ、自然環境の再生を促すことができる。

現在、私たちが使っているモノの生産システムには、「採取する>作る>捨てる」というプロセスがある。「採取する」フェーズでは、金属や石油など大地から採取されるもの、森から切り出した木材など自然由来の素材、農業的な方法で生産される繊維、海から採れる食物などさまざまな資源が集められる。そしてこれらは消費者の手に渡り、使い終わったものは廃棄される。
リサイクルやリユースは進んでいるものの、私たちが捨てたモノの多くは最終的には埋立や焼却によって処分されており、その量は膨大だ。これらは大気や地表、流域を汚染するなど環境破壊を引き起こす原因となる。さらに、現在の生産システムにおいては、生産、輸送、廃棄などの工程で多大なエネルギーが必要とされる。
廃棄物を最小限に抑えることを目指す「循環型」思考が求められており、これを実現させるのは、私たちが使うモノの原材料を生産システムの最上流に循環させる「アップサイクル」だ。私たちが製造するすべての製品にアップサイクル可能な材料を用いる方法を見つけることが重要だ。そして、木材や繊維など植物由来の再生可能な資源をできる限り使用することも大切である。
私たちは過去の社会あるいは近年の経験から、自然環境を再生し、その健全性を維持するための方法を学んできた。これらは、コミュニティによる製品の修理・再分配や、メーカーによる修理・再利用可能なデザインを促進する。成功の鍵は、地域社会の人々がこうした習慣を身につけるための教育や支援をすること、そして、こうした原則や方法を採用することがビジネスにとっても良いことを産業界に示すことだ。

CASE.01

上勝町ゼロ・ウェイストセンター

2003年、人口約1500人の徳島県上勝町は、2020年までに町内の廃棄物をゼロにする目標を掲げた。この意欲的な目標が掲げられた理由はいくつかあり、ひとつは廃棄物の処理と処分に非常にコストがかかるようになったことだ。廃棄物を埋立処理するスペースは限られており、限界に近づきつつあった。
また、この町は自然環境や伝統文化を大切にしており、住民のためにこれらを守り、観光客や新たな住民を町に呼び込むことも重要な課題だった。
目標達成へのプロセスは段階的であり、埋立・焼却方式からほぼ完全なリサイクル方式に移行するまでには10年以上を要した。100%リサイクルはまだ達成されていないが、すでに80%のレベルには達している。日本全体のリサイクル率が20%、米国が5%であることを考えると、これは驚異的な数値だ。

2020年には町内にゼロ・ウェイストセンターが設立され、国内外から注目されている。施設内はきれいに整備され、その大部分は町民の家庭ゴミを入れるコンテナになっている。ゴミは45種類に仕分けされ、それぞれリサイクルやアップサイクルの経路が異なる。コンテナにはラベルが貼られ、町がお金を出してリサイクルするのか、売ってお金にするのかが識別できるようになっている。

施設にゴミを持ち込むのは町民自身であり、彼らは施設のストックヤードで再利用可能な材料を入手することもできる。この施設では生ゴミは扱っていないが、代わりに町が家庭用コンポストを用意し、住民はこれを使って堆肥を庭や畑にまいている。また、センターにはリサイクルショップやイベント・教育用のコミュニティスペースが併設されている。

Credit: © Koji Fujii / TOREAL

 

ゼロ・ウェイストセンターの基本設計は、循環型デザインの重要な基本原則を体現している。構造体に使用されている木材は地元で集められたものだ。建築家が考案したのは、丸太を単純に割り、2つの平らな面を持たせて、大部分をそのままに使う方法だ。そしてこれらは、簡単に取り外して交換・再利用できるように組み立てられている。

センターには町民から寄付された約500枚の中古の戸や窓が用いられ、外観のデザインを特徴的なものにしている。このような建築部材のアップサイクルは、日本では歴史的に行われてきたことだ。自分の家や学校、お店で使われていた窓やドアなどを提供することで、住民はセンターとのつながりを感じることもできる。

Credit: © Koji Fujii / TOREAL

 

施設ではプロジェクト当初から教育や情報発信を重視しており、併設された小さなホテルでは、訪問者が滞在しながら施設のシステムや町の活動について学ぶことができる。また、町外や海外からの訪問者を惹きつける学習センター、カフェ、インターンシップなどさまざまな活動を奨励し、支援している。さらに、住民がゼロ・ウェイストの取り組みに簡単に参加できるようにするなど、コミュニティのアンカーとしての役割を担っている。
上勝ゼロ・ウェイストセンターは、資源循環型社会を実現するための効果的なモデルであり、デモンストレーションでもある。この手法を他の地域でも再現することはそう難しくないはずだ。

Credit: © Koji Fujii / TOREAL

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